『スピードチャンピオン』リリースまでの道のり

この記事は Unityゲーム開発者ギルド2 Advent Calendar 2022 12月4日の記事です。Unityゲーム開発者ギルド はいいぞ!

今回の記事の内容ですが『スピードチャンピオン』をリリースするまでの道のりです。スケジュールを大幅にオーバーしてしまった話や、苦労した話があります。これからスマホゲームを作りたいという人や、ゲームがどう作られたのか興味ある人向けだと思いますが、ただの小話として読んでも少しは楽しめる内容だと思います。

『スピードチャンピオン』について

リリースまでの道のり紹介の前に『スピードチャンピオン』自体を紹介させて下さい。超エキサイティングが売りのトランプゲームで、対戦相手がいて、対戦前後で演出があることが特徴となっています。実際のゲームについては配信中ですので、各種ストアからダウンロードして遊んでみて下さい。

作り始め

まず作り始めた理由ですが、元々作っていたゲームが規模が大きすぎて全然完成しない、となって3,4ヶ月で作ることを目標に、そのくらいの期間で作れるゲームとしてトランプゲームを制作開始しました。(が、実際は9ヶ月かかることになります…)

作ると決めたらまずコンセプト決めを行いました。いくつかコンセプトを考えましたが、最終的に、

「対戦ゲームのように熱くなれる1人用トランプゲーム」

にしました。トランプゲームはストアに沢山あるので特色が必要と考えた結果、このコンセプトにしました。そしてこのコンセプト実現のために、以下の3点をポイントとしました。

  • 対戦相手を強く意識させる
  • 後半に盛り上がる
  • 1つ1つの動作が気持ちいい

対戦相手については、負けた時に「3面をクリア出来なかった!」ではなく「マッハ警部に負けた!」という気持ちにさせたかったです。(※マッハ警部は対戦相手の名前です)ちょっとした気持ちの差ではありますが、熱くなるためにはこの気持ちが重要だと考えました。

後半に盛り上がるという点は、対戦ゲームの超必殺技などでよくある展開を取り入れたいと考えました。この点はルールとして盛り上げるのではなく、雰囲気を盛り上げる方針で進めました。

動作の気持ち良さも、人気の対戦ゲームはプレイした感じが気持ち良いものが多く『スピードチャンピオン』でも是非取り入れていきたいと考えました。

2月

制作は2022年2月に開始しました。まず、開始1週間でトランプゲームのルールとその見た目が完成しました。敵のAIも少しバグが出ましたが、大体その後2週間で完成しました。3週間でいきなりゲーム内容が完成するという超好スタートです。

当時を再現した見た目です

メインのトランプゲーム部分が出来たので「残りはメニューと、あと対戦相手の表現かな?それだけ作れば完成するから3ヶ月で完成なんて余裕なのでは?」と、このときはまだ思っていました…

3月

対戦相手の表現としてキャラと背景を表示できるようにしました。3Dモデルの背景に3Dのボクセルモデルを表示する形です。更に演出のタイミングも作りました。下の画像ではキャラがアニメーションをしていますが、まだこのときはアニメーションは作っていませんでした。これからキャラアニメーションとカメラアニメーションを作っていきます。

対戦相手のキャラと背景の表示
敗北演出。3月時点ではまだアニメーションはなかったです。

この表示まで作ったのが3月前半です。非常に順調で、ゴールデンウィークより前にリリース出来るのではないかと思っていました。

3月後半は背景を3つ作っていました。作ると言ってもアセットストアで背景を購入し『スピードチャンピオン』用にカスタマイズする形です。背景のライティングを考えて焼きこみしているときなどは、かなり綺麗にレンダリングされるのでとても楽しかったです。

序盤の背景をまず作りました

それと「後半に盛り上がる」を実現するために、後半に盛り上がるBGMを自作することを決意し、作った3つの背景に合わせた3つのBGMを作曲しました。この、BGMを自作するという決意ですが、後々重くのしかかってくることになります。

4月

カードの動きにイージングを導入して気持ち良さを増やしました。イージングというのはカードを動かすときにずっと同じ速度ではなく、徐々に加速したり減速したりすることです。これにより自然な動きに見せたり、気持ち良さを表現したりできます。イージングについては言葉で説明することが難しいので、気になる方は動画の方を見てみて下さい。こちらのサイト も参考になると思います。

そして Very Animation を導入しました。キャラアニメーション作成に非常に役立つアセットです。『スピードチャンピオン』の演出はキャラアニメーションとカメラの動きの組み合わせなので、このアセットを使用してこれからどんどん作っていきます。このとき4月23日でした。

5月

5月22日です。キャラアニメーションの作成に時間がかかりまくって、1ヶ月作ったのに8割くらいの完成状況で、まだ2割残っている状態です。このキャラアニメーション作成が本当に大変で、もう毎日のように泣き言を言っていました。アニメーションを作ってもキャラの手足がプルプル震えてしまったり、動きが人間っぽくなかったり、どうすれば良くなるか毎日手探りで大変でした。

歩くアニメーションは大変でした
決めポーズはカメラも大変でした

そして、5月末からはチュートリアルキャラの「む~ちゃん」を作り始めました。チュートリアルキャラはゲーム以外でも使いたかったので、アセットストアで買うのではなく、自作したいと前から考えていました。(※アセットストアで購入したアセットも用途によってはゲーム以外で使用可能です)

6月

む~ちゃんが完成しました。

Blenderで作りました

1ヶ月まるまるかかってしまい、6月末です。後から思えば、依頼して作成してもらうのも有りだったかもしれませんが、それはそれで数万円するので悩むところです。ただ、む~ちゃんが完成したときは本当に嬉しかったです。絵がほとんど描けないので、キャラを作ったことは今まで1回もなく、オリジナルキャラを生み出せた感動でかなりテンションが上がっていました。

7月

3ヶ月で終わるとどこかで言っていた気もしますが、既に6ヶ月目です。ですが、キャラの演出は全部完成し、背景も以前の3点に2点追加して全5点になりました。ゲームモードも予定していたものは全種完成しました。この辺りでは終わりが少し見えてきた安心感と、残っているタスクが知らないことばかりだという不安感が入り混じっていました。だんだんとゲームにはなってきましたが、調べなきゃいけないことあり過ぎる!という感じですね。

全種完成したゲームモード。ゲームモード名は伏せておきます

そして、ここでついに AdMob を導入しました。AdMob というのはGoogleによる広告表示のための仕組みで、個人開発者がゲームアプリで収入を得ようと思ったらほぼ必須になります。(※他の広告や課金という手もあります)

ただ、これも来月大変な時間がかかりました…

8月

課金もまだ出来ておらず、UIもほとんど出来ていない状態です。SEも鳴らないです。やることがまだ沢山残っているのに7ヶ月目になってしまいました。予定の倍くらい時間がかかっていて、この辺りから精神的な焦りがすごいことになってきていました。「頑張らなきゃ、頑張らなきゃ」って毎日思って、気合でゲームを作っていました。

さて、それはそうと今月はやっとフォント周りを作成しました。このときまでは文字がない世界でした。8月は更にチュートリアルも作成しつつ、 AdMob 関連も色々と作ったり試したりの月でした。

文字なしの設定画面

それと、 Google と Apple の開発者登録も8月に行いました。登録手続きって実はかなり苦手で、結構緊張しました。何事もなく登録出来てホッとしたのを覚えています。

9月

ついに8ヶ月目です。期限を優先して妥協すべきか色々と悩みました。けれど期限重視でクオリティを下げるよりも、やれるだけのことを精一杯やった方が次への反省に繋がると思って、なるべくクオリティを下げずに頑張っていました。「アプリがつまらないのは妥協したから」と思いたくなかったのです。

そんな9月の大きな実装は「課金」です。1から自分で作るのは難しいと思っていたので、 Ultimate Mobile Pro というアセットを導入しました。このアセットは以前にバンドルで購入したのですが、既にアセットストアから削除されていたので不安がありました。

また、 Feel も導入しました。このアセットはかなり有名で、揺れなどの演出を作成できるものです。『スピードチャンピオン』の気持ち良さの表現にかなり役立ったと思います。エフェクトも作成し、SEも作成し、どんどんゲームの気持ち良さをアップしていました。

ちなみにトランプをしているときのSEはほぼ自作しました。素材を購入して、それを自分で編集する形で作成していました。自分としては、結構良い感じのものが出来たのではないかと思っています。

FL Studioで作成しています

ただ、悪い予感が的中してしまいました。Ultimate Mobile Pro は Google Billing Library 4 非対応だったため、ストアに出せないことが判明しました。途中までこのアセットで実装したのに…と思いながら Cross Platform Native Plugins を導入し、広告非表示課金、アチーブメント、ツイッター機能をもう1回実装しました。

10月

運命の9ヶ月目です。3月に3曲作ったBGMですが、実はそれからまったく作っておらず、5つの背景に対して2曲足りない状態でした。後半に盛り上がる仕掛けをほどこしたBGMなので、アセットストアなどから購入することもできず、根性で2曲作成しました。作成しましたが、何度聞いても最後の背景用のBGMの主張が強すぎました。なので、この曲は特定場面だけ再生される曲に変えて、更にもう1曲作成しました。

計6曲と、登場・勝利・敗北の曲を作りました

そして、この辺りで世の中のアプリよりも自分のBGMの音が小さいことに気付きました。作り方の問題だったのですが、このせいでここにきて全曲編集をし直しました。また、課金もほとんどテストしていなかったのですが、やはりテストしたところ実装の不具合が大量に見つかりました。もう、毎日のように課金の修正をしていました。

市販のゲームってクリスマスなどがあるためか、11月12月に大きなタイトルが発売される傾向にあるのですが、リリース時期がぶつかりたくないと思い、絶対に10月中にリリースする気持ちで頑張っていました。

ストアの素材も準備していました。App Store の動画は3サイズ用意しなければならないので相当苦労しました。

その結果、ついに

10月27日にアプリをリリースすることができました!

今までゲームをダウンロードするだけだったストアに自分が作ったものが並んだこと、実際にアプリを遊んでくれる人がいたこと、感想までもらえたこと、とにかく全部嬉しかったです。「頑張って良かった!」という気持ちで一杯でした。

終わりに

リリース後ですが、ツイッター機能やアチーブメント機能にバグがあったのでアプリを更新しました。このときにUnityゲーム開発者ギルドの方々には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

そしてその後には、ゲームユーザーさんにアプリを知ってもらう、届けるのがとっても大変ということを強く思いました。ゲーム内容はそれなりにちゃんと作って、面白さも刺さる人にはしっかり刺さると思っていましたが、そもそも「トランプ スピード」で検索しても出てこなかったり、Twitterでもほとんど活動してこなかったのでツイートが届く人も少なく、なかなか自分のゲームを知ってもらえなくて悔しい思いをしました。

絵が描けないので描いてもらいました

この記事の冒頭の動画など、チャンネルに動画投稿するようにしたのも『スピードチャンピオン』を色んな人に知ってもらい、プレイしてもらいたいという気持ちからでした。好評配信中の『スピードチャンピオン』、この記事で興味を持っていただけたり、プレイしていただけたら幸いです。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

『スピードチャンピオン』

対応OS:Android/iOS

価格:無料(広告削除課金あり)

スピードチャンピオン公式ページ:https://www.yamayamadagames.com/speedt

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カテゴリー: 技術部